パンフレットやチラシ、会社案内などを制作するとき、「UDフォント」という言葉を目にすることがあります。
「普通のフォントとは何が違うのだろう」
「UDフォントにすれば読みやすくなるのだろうか」
「自分たちが作る印刷物にも必要なのだろうか」
と、判断に迷う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
UDフォントは、できるだけ多くの人が文字を読み取りやすいよう、ユニバーサルデザインの考え方を取り入れて設計されたフォントです。
ただし、UDフォントを選ぶだけで、印刷物全体が自動的に読みやすくなるわけではありません。
文字の大きさや行間、配色、余白、情報の配置なども含め、印刷物全体として「伝わりやすいデザイン」になっているかを考えることが大切です。
今回は、UDフォントとはどのようなものなのか、一般的なフォントとの違いや活用される印刷物、実際に使用するときに考えておきたいポイントまで、印刷物を発注する方にもわかりやすくお伝えします。
UDフォントとは?ユニバーサルデザインを取り入れた書体
UDフォントについて考える前に、まず知っておきたいのが「UD」という言葉の意味です。
UDは「Universal Design(ユニバーサルデザイン)」の略で、年齢や能力などにかかわらず、できるだけ多くの人が利用しやすいよう、製品や環境などを設計する考え方を指します。
UDフォントは、このユニバーサルデザインの考え方を文字のデザインに取り入れたフォントです。
UDフォントは文字を認識しやすいよう工夫されている
普段何気なく読んでいる文字も、フォントによって線の太さや形、文字の空間の取り方などが異なります。
デザイン性を重視したフォントの場合、独特な形状や細い線などが印象をつくる一方、使用する大きさや印刷条件によっては文字を認識しにくくなることがあります。
UDフォントでは、文字の形をわかりやすくしたり、線を見分けやすくしたりするなど、文字を認識・判別しやすくするための工夫が取り入れられています。
たとえば、似た形の文字を見分けやすくしたり、濁点や半濁点を認識しやすくしたり、小さく表示した場合でも文字の形がわかりやすくなるよう調整したりと、フォントによってさまざまな設計が行われています。
そのため、UDフォントは「単純に文字を大きくしたフォント」ではありません。
文字そのものの形や線、空間などを工夫することで、情報を読み取る際のわかりやすさに配慮していることが特徴です。
一般的なフォントとの違いは「設計の目的」
一般的なフォントとUDフォントを見比べても、一見すると大きな違いを感じないこともあります。
しかし、両者を考えるうえでポイントとなるのが、フォントを設計するときに何を重視しているかという点です。
フォントには、それぞれ異なる役割があります。高級感や繊細さを演出するもの、親しみやすさを表現するもの、力強い印象を与えるものなど、デザインによって受ける印象も変わります。
一方、UDフォントでは、文字の見やすさや読みやすさ、文字同士の判別のしやすさなどに配慮した設計が取り入れられています。
だからといって、一般的なフォントが読みにくく、UDフォントであれば必ず読みやすいという単純な違いではありません。
実際の印刷物では、使用するフォントだけでなく、文字の大きさや紙面の構成などによっても読みやすさは大きく変わるためです。
UDフォントにもさまざまな種類がある
「UDフォント」という名前の一つの書体が存在するわけではなく、UDの考え方を取り入れたフォントにはさまざまな種類があります。
たとえば、線の太さが比較的均一で視認しやすいゴシック系のほか、文章を読む場面などで使われる明朝系にもUDを意識したフォントがあります。
同じUDフォントでも、それぞれ文字の形や受ける印象は異なるため、使用する印刷物の目的に合わせて選ぶことが重要です。
会社案内の本文と、イベントチラシの大きな見出しでは、文字に求める役割も違います。
「UDフォントだからこれを使う」と決めるのではなく、何を伝える印刷物なのか、誰が読むのか、どの部分に使用するのかまで考えると、フォントを選びやすくなります。
UDフォントはどんな印刷物に使われる?具体的な活用例
UDフォントというと、公共施設の案内や高齢者向けの印刷物をイメージする方もいるかもしれません。
もちろん、そのような用途でも検討できますが、UDフォントの活用場面はそれだけではありません。
企業が制作するパンフレットや会社案内、チラシなど、さまざまな人に情報を届ける印刷物でも活用できます。
パンフレットや会社案内
パンフレットや会社案内では、企業名やキャッチコピーだけでなく、事業内容、商品・サービスの説明、会社概要、問い合わせ先など、多くの情報を掲載します。
特に本文や会社情報などは文字量が増えやすいため、デザイン性だけでフォントを選ぶのではなく、文章を無理なく読み進められるかという視点も欠かせません。
そのような場面で、UDフォントを選択肢の一つとして検討できます。
ただし、表紙から本文まですべてを同じUDフォントに統一する必要があるわけではありません。
表紙や大見出しには企業のイメージを表現できるフォントを使い、情報量の多い本文には読みやすさを意識したフォントを使用するなど、役割によって使い分ける方法もあります。
チラシやDM
チラシやDMでは、限られた紙面のなかに商品・サービスの特徴や料金、日時、場所、問い合わせ先など、さまざまな情報を掲載することがあります。
情報を増やしていくうちに文字が小さくなり、結果として「内容は充実しているのに読みにくい」という状態になることも珍しくありません。
こうした印刷物でもUDフォントを活用できますが、注意したいのは、UDフォントを使えば小さな文字をたくさん詰め込んでも問題ないわけではないことです。
フォント選びと同時に、情報の優先順位を決め、文字サイズや行間、余白などを調整しながら、紙面全体を整理する必要があります。
特にチラシは、最初からすべての文章をじっくり読んでもらえるとは限りません。
まず何を伝えたいのか、その次に何を読んでもらいたいのかという順序を整理したうえでフォントを選ぶことが、情報を届けやすい紙面づくりにつながります。
案内・掲示物・説明資料
店舗や施設内の案内、商品・サービスの説明資料、各種マニュアルなどでも、UDフォントは選択肢になります。
こうした印刷物では、デザインを楽しんでもらうこと以上に、「必要な情報を迷わず確認できること」が重視されるケースもあります。
たとえば、店内で少し離れた位置から確認する掲示物と、手元でじっくり読むパンフレットでは、適切な文字サイズやレイアウトは同じではありません。
誰が読むかだけでなく、どこから、どの程度の距離で、どのくらいの時間をかけて読むのかまで考えることがポイントです。
UDフォントは高齢者だけを対象としたものではなく、幅広い人へ情報をわかりやすく伝えたいときに検討できるフォントと考えると、活用できる場面が見えてきます。
UDフォントを使うときに知っておきたい4つのポイント
印刷物を制作するとき、「読みやすくしたいからUDフォントを指定しよう」と考えること自体は一つの方法ですが、
フォントだけに注目すると、かえって紙面全体のバランスを見落としてしまうことがあります。
ここからは、実際にパンフレットやチラシなどを制作する際に考えておきたいポイントを紹介します。
1.フォントだけで読みやすさは決まらない
読みやすい印刷物を作るためには、フォント以外にも文字サイズ、行間、字間、1行あたりの文字数、文字色と背景色、余白など、さまざまな要素を考える必要があります。
たとえば、読みやすさに配慮されたフォントを使用していても、文字が極端に小さかったり、行間が狭かったりすると、文章を追いにくくなることがあります。
反対に、情報のまとまりごとに十分な余白を設け、見出しと本文にメリハリをつければ、どこから読めばよいのかを把握しやすくなります。
そのため、UDフォントは読みやすい印刷物を作るための「選択肢の一つ」と考え、紙面全体を見ながら調整することが大切です。
2.印刷物の目的や読者に合わせて選ぶ
フォントを選ぶ前に整理しておきたいのが、「誰に、何を伝えるための印刷物なのか」という点です。
たとえば、不特定多数の人が見る施設案内と、特定の商品に興味を持った人へ渡すパンフレットでは、情報の内容も読み方も異なります。
また、若い世代を中心としたイベントのチラシなら、読みやすさだけでなく、イベントの雰囲気を伝えるデザイン性を重視したい場合もあるでしょう。
一方、年齢層の幅が広い人へ配布する案内では、文字を認識しやすいことをより重視するケースも考えられます。
このように、UDフォントを使うかどうかだけを先に決めるのではなく、印刷物の目的や読者を整理したうえで、適したフォントを検討することが重要です。
3.デザイン性とのバランスも考える
パンフレットやチラシは情報を伝えるだけでなく、企業や商品、サービスのイメージを伝える役割も持っています。
そのため、読みやすさだけを追求すればよいとは限りません。
高級感を伝えたいのか、親しみやすさを出したいのか、信頼感を大切にしたいのかによっても、適した文字のデザインは変わります。
そこで考えたいのが、フォントを使い分ける方法です。
たとえば、印象を強く残したいタイトルにはブランドイメージに合ったフォントを選び、説明文や基本情報には読みやすさを意識したUDフォントを採用するなど、それぞれの文字が担う役割に応じて設計できます。
「UDフォントを使うなら、すべての文字をUDフォントにしなければならない」と考える必要はありません。
読みやすさとデザイン性の両方を考えながら、紙面全体のバランスを整えることが大切です。
4.発注時はフォント名より「目的」を伝える
印刷物を制作会社へ依頼するとき、使用するフォントまで発注者側で決めなければならないと思われることがありますが、必ずしも専門的なフォント名を指定する必要はありません。
むしろ、「高齢の方にも配布するパンフレットなので文字を読みやすくしたい」「店内の少し離れた場所から確認する掲示物を作りたい」「掲載する情報が多いので、できるだけ整理して見せたい」といった目的を伝えることが重要です。
誰が読むのか、どのような場面で使用するのか、特に読んでもらいたい情報は何かがわかれば、フォントだけでなく、文字サイズやレイアウトを含めてデザインを検討しやすくなります。
当社では、決まった型に当てはめるのではなく、お客様のご要望や印刷物の目的を確認しながら、デザイン・印刷を進めています。
制作から印刷、発送まで社内でトータルに管理しているため、「UDフォントを使うべきかわからない」「どのようなデザインにすれば読みやすいのかわからない」という段階でも、まずは制作する印刷物の用途や届けたい相手、掲載したい内容をお聞かせください。
フォントだけを単独で考えるのではなく、実際に完成した印刷物を手にする方にとって情報が伝わりやすいかどうかを考えながら、細部まで調整していくことを私たちは大切にしています。
まとめ|UDフォントは「誰にどう読んでもらうか」から考える
UDフォントとは、ユニバーサルデザインの考え方を取り入れ、文字の見やすさや読みやすさ、判別のしやすさなどに配慮して設計されたフォントです。
パンフレットやチラシ、会社案内、店舗・施設の掲示物、説明資料など、さまざまな印刷物で活用できますが、
「UDフォントを使えば必ず読みやすくなる」と考えるのではなく、文字サイズや行間、配色、余白、情報の配置なども一緒に考える必要があります。
また、すべての文字をUDフォントに統一するのではなく、タイトルには印象を伝えやすいフォント、本文には読みやすさを意識したフォントを使用するなど、役割に応じて使い分ける方法もあります。
印刷物を作るときに大切なのは、最初にフォントを決めることではなく、「誰に、何を、どのような場面で読んでもらいたいのか」を整理することです。
その目的が明確になれば、UDフォントを採用するかどうかだけでなく、文字の大きさやレイアウト、情報の見せ方についても判断しやすくなり、伝えたい内容をきちんと届けるための印刷物へとつながっていきます。
